今回はアフリカ諸国との比較参考国として日本の経済予測について取り上げます。
使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。
WEOでは最新のデータに基づき予測を毎回改訂していますので、過去のデータを顧みることで予測の不確実性を理解したうえで有益なツールとして使用することが望まれます。
国際比較ランキング
GDP成長率
以下のグラフは2021~2027年におけるアフリカ諸国の実質GDP成長率のランキングを示しています。
また、参考国として米国と日本を並記しています。当該期間では、米国は2.2%、日本は1.2%と予測されており、アフリカ諸国と比較すると非常に低水準となっています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去における経済成長について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はアフリカ諸国との比較対象国として、日本の経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。 成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産[…]
時系列推移
GDP成長率・一人あたりGDP
以下は2000年以降のGDP成長率(左図)および世界に占めるGDPシェア(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
日本のGDP成長率は2000年以降ではリーマンショック時の2008-2009年と新型コロナ時の2020年を除くと、おおよそ0-2%の間で推移しており、過去のWEOについてもこの範囲で収まっています。
WEOの過去の予測値は上記の大幅なマイナス成長期を除くと、それなりに実績値と近い推計値となっています。
なお、直近のWEOによると2022年と2023年のGDP成長率は1.7%、1.6%とみられており、2027年では0.4%と徐々に減速すると予測されています。
また、世界に占めるGDPシェアを見えると、水準の改訂はあるものの、推移としては予測値と実績値でおおよそ類似しています。
GDPシェアは2000年では7%ほどでしたが、2021年では3.8%まで減少し、さらに2027年には3.4%ほどに半減すると見られています。
なお、水準が改定ごとに変動しているのは、GDP統計は随時データの推計方法や会計概念が拡張するため、その影響によるものと考えられます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
次に以下のグラフは一人あたりの実質GDPの推移を表しています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
単位は国際比較で用いられる2017年PPP換算(米ドル)を用いています。PPPについては以下の記事でまとめていますので、こちらも参照ください。
今回はアフリカ各国の物価の違いについて整理します。 国際間の物価の違いを表す経済データとして、購買力平価(PPP)というものがあります。今回はこのPPPを用います。 購買力平価(PPP)とは 総務省によると ※ 購買力平価(Pu[…]
一人あたりGDPについては、2000年では36,000ドルほどでしたが、2021年では41,000ドルとなり、2027年には45,000ドルほどまで上昇すると見込まれています。
インフレ率
以下は2000年以降の年次インフレ率(左図)および2000年を基準としたインフレ指数(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
日本のインフレ率は変動はありつつもおおよそ-1.5%~2.5%の間で推移しています。
直近のWEOでは、2022年から2023年にかけてインフレ率は上昇すると見られていますが、2027年には1%ほどにまで収束すると見られています。
またインフレ指数をみると、2000年から2014年かけて物価は3%ほど下がっており、その後は上昇に転じていますが、2015年4月版時以降の予測値は実績値を常時上回っており、現実では物価がなかなか上昇していない状態となっています。
なお、インフレ指数は2000年を100とすると、2021年では103ほどとなっており、さらに2027年には110ほどまで上昇すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の物価変動について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回は参考国として、日本のCPIおよびデフレータについて整理します。 なお、ここでは国内での物価の成長率について取り上げます。 物価水準の国際比較については、以下の記事などを参照ください。 [sitecard subtit[…]
失業率
以下は2000年以降の失業率の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
日本の失業率は2000年代前半の5%強から低下傾向にあり、コロナ前の2019年では2.4%まで下がっています。
その後、新型コロナの影響もあり2021年では2.8%まで上昇しますが、直近のWEO2022/10では2027年には2.4%まで改善すると見込まれています。
過去のWEOの予測を見ると2015年4月版以降、予測値はおおよそ過去からの横ばいとなっており、予測の精度はあまり高くないと思われます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の失業率や労働について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はアフリカとの参考国として日本の就業率、失業率、労働生産性などの労働関連のデータについて簡単に整理します。 なお、産業別の労働者数や賃金・労働時間に関しては以下の記事を参照ください。 [sitecard subtitle=関[…]
政府の歳入歳出・負債
以下は2000年以降の政府の歳入(左図)と歳出(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
2000年ではGDP比で29%ほどの歳入、36%ほどの歳出と赤字収支構造となっており、2021年ではそれぞれ36%と43%とさらに赤字収支は拡大しています。
さらに直近のWEOの予測では2027年ではそれぞれ35%と38%と見込まれており、赤字収支構造は継続すると見られてます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
さらに以下は政府の総負債(左図)と純負債(右図)の推移を表しています。
なお、純負債は総負債から債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものをさします。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
日本のGDPに対する総負債比と純負債比は2000年ではそれぞれ136と68ほどでしたが、2021年には262と168まで上昇ていますが、直近のWEOでは2027年にはそれぞれ263と175へ拡大すると見込まれています。
さいごに
今回使用しているWEOは常時データを改訂しています。