今回はナイジェリアの経済予測について取り上げます。
使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。
WEOでは最新のデータに基づき予測を毎回改訂していますので、過去のデータを顧みることで予測の不確実性を理解したうえで有益なツールとして使用することが望まれます。
ナイジェリアの基本情報
ナイジェリアはカメルーン、チャド、ニジェール、ベナンを隣国にもつ西アフリカの国です。
ナイジェリアの人口は2016年時点で約1.9億人とアフリカではもっとも人口が多い国です。
また人口密度は202人/km2とアフリカ平均の40人/km2の5倍以上であり、アフリカでは7番目に人口密度の高い国です。
一人あたりGDPは2016年時点で5,800ドルとアフリカ平均の5,000ドルとほぼ同程度となっています。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
国際比較ランキング
GDP成長率
以下のグラフは2021~2027年におけるアフリカ諸国の実質GDP成長率のランキングを示しています。
また、参考国として米国と日本を並記しています。当該期間では、米国は2.2%、日本は1.2%と予測されており、アフリカ諸国と比較すると非常に低水準となっています。
ナイジェリアに関しては、同期間では4.2%ほどの経済成長を見込まれており、アフリカ諸国の中では42番目に高い水準となっています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去における経済成長について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
時系列推移
GDP成長率・一人あたりGDP
以下は2000年以降のGDP成長率(左図)および世界に占めるGDPシェア(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
ナイジェリアのGDP成長率は2000-2014年では比較的高い経済成長を遂げてきましたが、2015年以降は0%前後と経済は低迷しています
過去のWEOの経済予測は実績値に対して、乖離は見られるものの2015年4月版を除けばおおよそ近い水準となっています。
なお、直近のWEOによると2022年と2023年のGDP成長率は3.2%、3.0%とみられており、2027年の2.9%にかけて徐々に減速すると予測されています。
また、世界に占めるGDPシェアを見えると、水準の改訂はあるものの、2015年4月版を除けば推移は予測値と実績値でおおよそ類似しています。
GDPシェアは2000年の0.5%から、2021年には0.8%まで拡大しており、2027年にかけてはほぼ横ばいと見られています。
なお、水準が改訂しているのは、GDP統計は随時データの推計方法や会計概念が拡張するため、その影響によるものと考えられます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
次に以下のグラフは一人あたりの実質GDPの推移を表しています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
単位は国際比較で用いられる2017年PPP換算(米ドル)を用いています。PPPについては以下の記事でまとめていますので、こちらも参照ください。
今回はアフリカ各国の物価の違いについて整理します。 国際間の物価の違いを表す経済データとして、購買力平価(PPP)というものがあります。今回はこのPPPを用います。 購買力平価(PPP)とは 総務省によると ※ 購買力平価(Pu[…]
一人あたりGDPについては、2000年では3,000ドルほどでしたが、2021年では5,000ドルまで上昇しています。
また、その後の予測値は2019年4月版や2021年4月版ではほぼ横ばいでしたが、最新の予測では2027年かけては微増に転じています、
インフレ率
以下は2000年以降の年次インフレ率(左図)および2000年を基準としたインフレ指数(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
ナイジェリアのインフレ率は毎年大きく変動しています。
また、過去のWEOの予測インフレ率は2015年4月版を除けばおおよそ実績値と近似しています。
直近のWEOによると、2022年から2023年にかけてインフレ率は18%ほどまで上昇すると見られていますが、2027年には12%ほどにまで収束すると見られています。
またインフレ指数をみると、おおよそ過去のWEOの推移は実績値と近似していることが確認できます。
インフレ指数は2000年を100とすると、2021年では1,200ほどとなっており、さらに2027年には2,600ほどまで上昇すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の物価変動について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はナイジェリアのCPIおよびデフレータについて整理します。 なお、ここでは国内での物価の成長率について取り上げます。 物価水準の国際比較については、以下の記事などを参照ください。 [sitecard subtitle=[…]
政府の歳入歳出・負債
以下は2000年以降の政府の歳入(左図)と歳出(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
2000年ではGDP比で29%ほどの歳入、25%ほどの歳出と黒字収支構造となっていましたが、2021年ではそれぞれ7%と13%と赤字収支へ転じています。
さらに直近のWEOの予測では2027年ではそれぞれ7%と14%と見込まれており、赤字収支構造は継続すると見られてます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
さらに以下は政府の総負債(左図)と純負債(右図)の推移を表しています。
なお、純負債は総負債から債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものをさします。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
ナイジェリアのGDPに対する総負債比は2000年では58ほどでしたが、2008年には8程度まで急激に改善しています。
しかし、その後は増加へ転じ、2021年には37まで上昇しており、直近のWEOでは2027年には44とさらに拡大すると見込まれています。
また、純負債比は2021年では36ですが、2027年には44となっています。
さいごに
今回使用しているWEOは常時データを改訂しています。
特に近年では新型コロナの状況により予測値が大幅に改訂することありますので、新型コロナについて状況を知りたい場合は以下の記事を参照ください。
今回はナイジェリアの新型コロナの感染状況について簡単に整理します。 ナイジェリアの基本情報 ナイジェリアはカメルーン、チャド、ニジェール、ベナンを隣国にもつ西アフリカの国です。 ナイジェリアの人口は20[…]