今回はブルンジの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
ブルンジの基本情報
ブルンジはコンゴ民主共和国、ルワンダ、タンザニアの国境に位置する東アフリカの国です。
ブルンジの人口は2016年時点で約1,200万人とアフリカでは平均より少し人口の少ない国です。
ただし、人口密度は415人/km2とアフリカ平均の40人/km2の10倍以上あります。
一方、一人あたりGDPは2016年時点で700ドルとアフリカ平均の5,000ドルの1/7程度であり、アフリカでも下から2番目の国です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、ブルンジは長期では44番目の2.5%となっていますが、2000年以降では成長率は3.8%と加速しています。また、アフリカ全体においては35番目と順位を上げています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、ブルンジは43%と米国よりも5ポイントほど低い水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると1980年以降おおよそ40%台後半から40%台前半へ下落していますが、就業者数自体は人口増加にともない1980年の200万人から直近では500万人へ増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はブルンジのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1980年前後は20%ほど高い時期もありましたが、基本的には長期で10%程度で推移しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
名目資本ストック比率および実質ストック比率は1960年ではおおよそ3.0程度でしたが、1970年には2.0ほどへ低下し、その後はほぼ横ばいで推移しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、ブルンジは2.1とアフリカでは36番目であり、資本ストックはやや低い水準と考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。
今回はブルンジの国富(National wealth)についてです。 なお、国富(National wealth)とはストックを表し、これに対応するフローがGDPと見ることができます。 ここでは、World […]
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
ブルンジではベルギーからの独立直前の1961年とブルンジ内戦の1990年-1994年あたりではGDP成長率はマイナスとなっていますが、それ以外の期間ではおおよそ5%程度の経済成長を遂げています。
経済成長の要因を見ると、1980年代以降では(ブルンジ内戦のあった1990年代を除き)おおよそ2ポイントほどは労働投入が占めており、次に資本投入が1ポイントほどを占めています。
なお、TFPについてはブルンジ内戦のあった1990年代では-3ポイントほどであり、さらにその後の2000年代と2010年代においてもマイナスが継続しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はブルンジの産業構造を確認します。 ブルンジの基本情報 ブルンジはコンゴ民主共和国、ルワンダ、タンザニアの国境に位置する東アフリカの国です。 ブルンジの人口は2016年時点で約1[…]