エスワティニの成長会計:全要素生産性(TFP)、資本ストック、労働投入量

TFP

今回はエスワティニの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。

成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。

また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。

 

そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。

 

エスワティニの基本情報

エスワティニは南アフリカ、モザンビークを隣国にもつアフリカ南部の国です。

かつてはスワジランドと呼ばれていましたが、2018年にエスワティニと改名しました。

エスワティニの人口は2016年時点で130万人とアフリカでは比較的人口の少ない国です。

一方、人口密度は75人/km2とアフリカでは比較的人口密度の高い国です。

 

また、一人あたりGDPは2016年時点で8,500ドルとアフリカでは比較的高い国です。

アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。

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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。

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GDP成長率

以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。

日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。

 

一方、エスワティニは長期では15番目に高い4.4%となっていますが、2000年以降では成長率は0.3%と急激に減速しており、アフリカ全体でも49番目へランクを下げています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

就業率・就業者数

労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。

以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。

日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。

一方、エスワティニは27%と日本の半分以下であり、アフリカでも45番目と低い水準となっています。

出所:Penn World Table, version 10.0

また就業率の推移をみると、1980年以降就業率は横ばいから2010年以降上昇しており、また人口増加に伴ない就業者数は20万人から30万人へ増加しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

資本投入

経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。

以下はエスワティニのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1970年代初頭は5%以下の水準でしたが、1980年代前半には20%近くまで上昇し、その後ほぼ10%強で推移しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。

エスワティニでは、名目ストック比は1970年以降GDP比で0.5から3.5ほどまで上昇している一方で、実質ストック比は1980年代から2000年代前半は5.0ほどで安定していましたが、直近では3.5まで低下しています。で安定しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。

日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。

一方、エスワティニは3.5とアフリカでは9番目であり、資本ストックはやや高い水準とあると考えられます。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。

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全要素生産性(TFP)

以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)

エスワティニでは、1980年代から1990年代では資本と労働がGDP成長率のおおよそ半分づつを占めていましたが、2000年代では資本と労働の寄与度はほぼゼロとなり、TFPの寄与度ほ大半となっています。

しかし、2010年以降になるとTFPはマイナスに転じており、GDP成長率も減少しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

さいごに

今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。

経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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