日本の成長会計:全要素生産性(TFP)、資本ストック、労働投入量

TFP

今回はアフリカ諸国との比較対象国として、日本の経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。

成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。

また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。

 

そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。

 

GDP成長率

以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。

日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

就業率・就業者数

労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。

以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。

日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。

出所:Penn World Table, version 10.0

また就業率の推移をみると、1960年以降ほぼ70%近辺で安定して推移しています。

一方、就業者数自体は人口増加に伴ない就業者数は4,800万人から7,000万人へ持続的に増加しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

労働の構成について気になる方は以下の記事もご覧ください。

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資本投入

経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。

以下は日本のGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年から1970年代にかけて投資シェアが40%まで急増し、それ以降は徐々に投資シェアは減少していき、2010年以降は20%超で横ばいに推移しています。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。

名目・実質資本ストックは1960年には3.0ほどでしたが、2010年には6.0あたりまで一貫して上昇していましたが、その後は減少傾向となっており、その結果今後の資本投入も減少していくことが想定されます。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。

日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。

出所:Penn World Table, version 10.0

 

全要素生産性(TFP)

以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)

日本では、1960年代はTFPが大きく寄与したことにより10%近い高い経済成長を遂げています。

しかし、1970年代以降は資本投入とともにTFPの成長も低下し、その結果1970年代から1980年代は4.0%程度の経済成長にとどまり、更にそれ以降は労働投入もほぼ0%成長となったことで、経済成長も1.0%ほどの低成長が続いています。

出所:Penn World Table, version 10.0

さいごに

今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。

経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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