モロッコの成長会計:全要素生産性(TFP)、資本ストック、労働投入量

TFP

今回はモロッコの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。

成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。

また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。

 

そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。

 

モロッコの基本情報

モロッコは地中海に接する北アフリカの国です。

モロッコの人口は2016年時点で約3,500万人とアフリカでは11番目に人口が多い国です。

人口密度は78人/km2とアフリカ平均の40人/km2の2倍程度です。

一人あたりGDPは2016年時点で8,100ドルとアフリカ平均の5,000ドルの1.6倍程度です。

アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。

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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。

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GDP成長率

以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。

日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。

 

一方、モロッコは長期では16番目に高い4.2%となっていますが、2000年以降では成長率は3.7%と減速しています。また、アフリカ全体においては36番目と順位も大幅に下がっています。

GDP成長率ランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

 

就業率・就業者数

労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。

以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。

日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。

一方、モロッコは32%と日本より20ポイント以上低く、アフリカでは34番目に高い水準となっています。

就業率ランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

また就業率の推移をみると1960年以降20%台前半から30%台前半へ緩やかに上昇しており、就業者数自体も人口増加も相まって1960年の300万人から直近では1,200万人へ増加しています。

モロッコの就業率と就業者数

出所:Penn World Table, version 10.0

 

資本投入

経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。

以下はモロッコのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年代および1970年代前半では10%ほどで横ばいで推移していましたが、その後は上昇傾向となり2000年代後半には40%近くまで上昇しています。

また現在でもすの水準を保っており、おおよそ35%程度で推移しています。

モロッコの最終消費

出所:Penn World Table, version 10.0

 

投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。

名目資本ストック比率は1960年では1.5程度でしたが、直近では5.0超まで増加しています。

ただし、物価変動を除いた実質ストック比率は同期間においてもほぼ横ばいとなっています。モロッコの資本ストック

出所:Penn World Table, version 10.0

 

また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。

日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。

一方、モロッコは4.9とアフリカでは6番目であり、資本ストックは比較的高い水準であると考えられます。資本ストックランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

 

なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。

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全要素生産性(TFP)

以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)

1956年にフランスから独立したモロッコは1960年代は平均7%超と高い経済成長を遂げており、その多くはTFPに起因しています。

しかし、1970年代以降になると、TFPへマイナスへ転じ、資本投入と労働投入が経済成長の主要因となっています。ただし、TFPのマイナスは経済成長の足枷となり、1990年代には経済成長は2%ほどまで減速しています。

2000年代以降になると労働投入の寄与度は低下するものの、前期までマイナスであったTFPはプラスへ転じたことにより経済成長は2000年代は5.3%、2010年代は4.2%と1990年代から加速しています。モロッコの成長会計

出所:Penn World Table, version 10.0

さいごに

今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。

経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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