今回はモザンビークの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
モザンビークの基本情報
モザンビークは南アフリカ、ジンバブエ、ザンビア、タンザニア、マラウイを隣国に持つアフリカ南部の国です。
モザンビークの人口は2016年時点で約2,900万人とアフリカでは比較的人口の多い国です。
一方、人口密度は36人/km2とアフリカ平均40人/km2をやや下回ります。
一人あたりGDPは2016年時点で1,200ドルとアフリカ平均の5,000ドルの3割にも満たない水準です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
こんにちは、KOMEです。 1回目の投稿ではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると20[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、モザンビークは長期では24番目に高い3.7%となっていますが、2000年以降では成長率は5.0%と加速しています。ただし、アフリカ全体においては24番目と順位自体はほぼ変わっていません。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、モザンビークは36%と日本より20ポイントほど低く、アフリカでは29番目に中位水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると1960年以降変動はあるものの、おおよそ30-40%の間で横ばいで推移している一方で、就業者数自体は人口増加にともない1960年の200万人から直近では1,000万人へ増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はモザンビークのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年代は10%ほどでしたが、徐々に投資シェアは上昇していき、2010年代になると一時は50%近くに達するなどさらに急増しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
名目資本ストック比率は1960年では1.0程度でしたが、1980年代半ばにかけて上昇し、その後は減少へ転じていますが、2000年代後半から再度上昇し、直近では3.0程度まで増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、モザンビークは3.1とアフリカでは23番目であり、資本ストックは平均的な水準とあると考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。
今回はモザンビークの国富(National wealth)についてです。 なお、国富(National wealth)とはストックを表し、これに対応するフローがGDPと見ることができます。 ここでは、Worl[…]
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
モザンビークでは1960年代および970年代では高い資本投入の寄与度のもとGDP成長率は4%弱で安定しています。
ただし、1975年のポルトガルからの独立や1977年から1992年まで続くモザンビーク内戦などにより、1960年代~1980年代ではTFPが大きくマイナスに寄与しています。
その後の1990年代および2000年代ではそれ以前からの反動もありTFPは大きくプラスの寄与しており、同期間における経済成長は6.0%と7.7%と順調に推移しています。
しかし、2010年に入るとTFPは大幅にマイナスへ転じており、資本投入は7.0もの寄与度を示しているにも拘わらず、GDP成長率自体は5.3%にとどまっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はモザンビークの産業構造を確認します。 モザンビークの基本情報 モザンビークは南アフリカ、ジンバブエ、ザンビア、タンザニア、マラウイを隣国に持つアフリカ南部の国です。 モザンビークの人口は2016年[…]