ナミビアの成長会計:全要素生産性(TFP)、資本ストック、労働投入量

TFP

今回はナミビアの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。

成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。

また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。

 

そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。

 

ナミビアの基本情報

ナミビアは南アフリカ、ボツワナ、アンゴラ、ザンビアを隣国にもつアフリカ南部の国です。

ナミビアの人口は2016年時点で1,700万人とアフリカでは平均的な人口を有する国です。

人口密度は22人/km2とアフリカ平均40人/km2の半分程度です。

 

一人あたりGDPは2016年時点で3,900ドルとアフリカ平均の5,000ドルの8割程度です。

アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。

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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。

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GDP成長率

以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。

日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。

 

一方、ナミビアは長期では31番目に高い3.3%となっていますが、2000年以降では成長率は4.1%と加速しています。ただし、アフリカ全体においては30番目と順位自体はほぼ変わっていません。

GDP成長率ランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

 

就業率・就業者数

労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。

以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。

日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。

一方、ナミビアは30%と日本より25ポイントほど低く、アフリカでは40番目に低い水準となっています。

就業率ランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

また就業率の推移をみると1960年以降変動はあるものの、おおよそ25-30%の間で横ばいで推移している一方で、就業者数自体は人口増加にともない1960年の20万人から直近では70万人超へ増加しています。

ナミビアの就業率と就業者数

出所:Penn World Table, version 10.0

 

資本投入

経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。

以下はナミビアのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年代後半から上昇し、1970年代では30%近くまで上昇していますが、1980年以降減少し、1980年代半ばには10%程度まで減少しています。

その後は、2010年代前半かけて再び30%程度まで上昇していますが、2010年代後半には再び10%程度まで減少しています。

ナミビアの最終消費

出所:Penn World Table, version 10.0

 

投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。

名目資本ストック比率および実質ストック比率は1960年では1.5程度でしたが、直近では3.5程度まで増加しています。

ナミビアの資本ストック

出所:Penn World Table, version 10.0

 

また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。

日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。

一方、ナミビアは3.4とアフリカでは20番目であり、資本ストックは平均的な水準と考えられます。資本ストックランキング

出所:Penn World Table, version 10.0

 

なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。

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全要素生産性(TFP)

以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)

ナミビアでは1966年から1990年にかけて独立戦争下でしたが、比較的その期間においても経済成長はプラスととなることが多く、それは1960年代および1970年代では資本投入が大きく寄与し、1980年代では労働投入が大きく寄与しています。

しかし、TFPを見ると戦時下の影響かマイナスに寄与していましたが、その後の1990年代では大幅なプラスの寄与度へ転じています。

 

2000年以降では労働投入と資本投入は経済成長に対して同程度の寄与度を迎えていますが、TFPは再びマイナスへ転じており、特に2010年代では独立戦争下の1980年代に次ぐ大幅なマイナス寄与度となっています。ナミビアの成長会計

出所:Penn World Table, version 10.0

さいごに

今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。

経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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