今回はナイジェリアの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
ナイジェリアの基本情報
ナイジェリアはカメルーン、チャド、ニジェール、ベナンを隣国にもつ西アフリカの国です。
ナイジェリアの人口は2016年時点で約1.9億人とアフリカではもっとも人口が多い国です。
また人口密度は202人/km2とアフリカ平均の40人/km2の5倍以上であり、アフリカでは7番目に人口密度の高い国です。
一人あたりGDPは2016年時点で5,800ドルとアフリカ平均の5,000ドルとほぼ同程度となっています。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、ナイジェリアは長期では23番目に高い3.7%となっていますが、2000年以降では成長率は11.2%と急激に加速しており、アフリカ全体でもっとも高い成長率となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、ナイジェリアは36%と日本より20ポイント近く低く、アフリカでも28番目に低い水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると1960年から1985年へかけて低下していますが、人口増加に伴ない就業者数は同期間では2,000万人から2,600万人へ増加しています。また、直近では7,300万人まで大幅に上昇しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はナイジェリアのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年代、1970年代では投資シェアが最大のシェアを占めていましたが、その後は一貫して減少傾向にあり、直近では10%ほどまで低下しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
ナイジェリアでは、実質ストック比は1960年では3.0程度でしたが、1960年代および1970年代の大幅な投資により、1980年代半ばには実質ストック比は5倍近く蓄積しています。
しかし、1980年代以降の投資シェアの減少にともない、実質ストック比は3.0程度まで低下しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、ナイジェリアは3.2とアフリカでは22番目であり、資本ストックは平均的な水準とあると考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。
今回はナイジェリアの国富(National wealth)についてです。 なお、国富(National wealth)とはストックを表し、これに対応するフローがGDPと見ることができます。 ここでは、Worl[…]
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
ナイジェリアは1960年の独立後、国内の混乱もありTFPが大幅にマイナスに寄与しています。
1970年代では前期からの反動もありTFPはプラスに転じていますが、1980年代にはムハンマド・ブハリ将軍ら軍政派によるクーデターなどにより再び経済は停滞し、TFPがマイナスとなっています。
1990年代以降は、人口増加や就業率の上昇により労働投入が大きく経済に寄与している一方で、資本ストックの低下にとり資本投入の寄与度は小さくなっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はナイジェリアの産業構造を確認します。 ナイジェリアの貿易構造と人口構成についてはこちらをご覧ください。 [sitecard subtitle=関連記事 url=https://africa-keizai[…]