米国(アメリカ)の産業構造:GDPシェア、GDP寄与度、労働者数シェア、労働生産性について

今回はアフリカとの比較の参考国として米国(アメリカ)の産業について整理します。

米国(アメリカ)については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。

 

米国(アメリカ)の人口構成についてはこちらをご覧ください。

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産業別GDP構成比

早速ですが、以下は日本の1970年から2020年までの産業別のGDP構成比の推移を表します。

米国の産業構成比

出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”, December 2021

 

1970年時点で40%ともっともGDPシェアが大きかった7.その他サービスは、直近では55%ほどさらに拡大しています。

一方、1970年で2番目にシェアの大きかった2.製造業はかつては25%近くでしたが、直近では10%程度まで減少し、5.商業・レストラン・ホテルに抜かれ、6.運輸・通信とほぼ近い水準まで低下してます。

 

産業別GDP寄与度

以下はGDPにおける産業別寄与度を表します。

(なお、ここでは5年平均を採用してます。また、ここでの産業GDPと一般的に用いるマクロのGDPとでは統計上の誤差により乖離が生じています。)

米国の産業別寄与度

出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”, December 2021に基づく推計値

 

米国(アメリカ)はリーマンショック時の2000年代後半や新型コロナ時の2010年代後半を除くと、経済成長は平均すればおおよそ2-3%の間で安定して推移しています。

産業別の寄与度をみると、いずれに期間においても6.運輸や7.その他サービスは安定してGDPにはプラスに寄与しています。

一方、3.製造業や5.商業・レストラン・ホテルについてはGDP寄与度には変動があり、これらの産業がプラスに寄与する期間においては比較的高めのGDP成長を遂げています。

また、2000年代後半に始まったシェールガス革命はGDPへの寄与度で見ると2.鉱業は0.2%程度と僅かな程度に留まっています。

 

産業別就業者数シェア

以下は1991年から2021年の産業別就業者数のシェアを表します。

米国の就業構成比

出典:ILO Modelled Estimates, November 2021に基づく推計

 

就業者数シェアの推移はGDPシェアの推移と類似しています。

1991年では就業者の40%強は7.サービス業に従事していましたが、直近では50%程度まで増加しています。

また、前節で取り上げたように3.製造業のGDPシェアが減少してきたように、就業者シェアについても1991年以降は17%から10%ほどに減少しています。

 

産業別労働生産性(産業別就業者あたりGDP)

以下は2020年における産業別の労働生産性(産業別の就業者一人あたりGDP)を米ドル換算で表しています。

(なお労働生産性といっても、測定の方法は様々あります。より望ましい測定方法をアフリカ諸国に適応するにはデータ制約から困難であるため、ここでは簡易な方法として分子には為替レート換算した産業別GDP、分母には産業別就業者数を用いています。

米国(アメリカ)における詳細な産業別生産性については、日本資産性本部や経済産業研究所のJIPデータベース、慶應義塾大学のKEOデータベースを参照ください。)

米国の産業別生産性

出典:ILO Modelled Estimates, November 2021およびUN “The National Accounts Main Aggregates Database”, December 2021に基づく推計

 

2020年における米国(アメリカ)全体の労働生産性は69,000ドルほどですが、産業によりそれは大きく異なります。

もっとも労働生産性が高い産業は2. 鉱業・電ガス水であり、労働生産性は115,000ドルほどです。

一方、労働集約的な1.農業は33,000ドルと労働生産性が低くなっています。

 

さいごに

米国(アメリカ)の産業構造についてまとめると以下のとおりです。

  • 産業別GDPシェアおよび就業者数シェアは一貫して7.サービスが拡大し、3.製造業が減少。現在では7.サービスが一国全体の半分ほどを占める
  • リーマンショック時や新型コロナ時を除けば、経済成長は安定して2-3%程度ほど。また、いずれの期間においても6.運輸や7.その他サービスは安定してプラスの寄与度であるのに対し、3.製造業や5.商業・レストラン・ホテルは比較的変動的
  • 労働生産性が高い産業は2.鉱業・電ガス水、一方労働生産性の低い産業は1.農業

アフリカ諸国の参考としてご覧ください。

 

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