今回はアフリカとの比較の参考国として日本の貿易について整理します。
日本については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。
(本来日本については詳細なデータを長期で利用できますが、ここでは比較しやすいようにアフリカ諸国と同一のデータベースを用いて比較します。)
なお日本の関税率については以下の時期を参照ください。
今回はアフリカ諸国との比較国として日本の関税率について整理します。 関税率などのデータはWTO Statが公表している、最恵国待遇相手における関税率や免税率などを用いています。 なお、貿易について以下の記事を[…]
貿易収支の推移
早速ですが、以下は1970年以降の日本のGDPに占める輸出、輸入および貿易収支のシェアを表します。
出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”
日本では過去50年ではほとんどの年次で貿易黒字ですが、2011-2015年は4年連続の貿易赤字を記録しています。
2016-2019年では平均0.6%の貿易黒字に戻っていますが、1970-2010年の平均1.3%の貿易黒字に比べると貿易黒字比率は半分程度に留まっています。
輸出の構成
以下は1988年以降の輸出品の構成です。
日本の主な輸出は本来8. 機械が大半を占めますが、それも過去1988年から2020年では76%から64%へと急激に減少しています。
その代わりに3.化学製品と9.その他製品はそれぞれ8%と3%から14%と8%へ拡大しています。特に輸出が拡大している3.化学製品のうち1/4はプラスチック製品が占めることから、今話題のカーボンニュートラル政策が進むと、輸出が減少する要因へとつながります。
出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
以下は上記の10分類を100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げています。
日本の輸出品の上位は機械類ですが、減少傾向にあります。特に1990年半ばから84.一般機械と85.電気機械の輸出が減少しています。
特に85.電気機械については減少のスピードが速く、それは日本の家電やパソコンなどが国内工場を閉鎖した時期と重なります。
87.自動車については減少のスピードは緩やかであるものの、今後もその傾向は続くことが予想されます。
出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
輸入の構成
一方、輸入の構成については以下のようになっています。
2020年の輸入の構成は、8.機械が33%、2. 鉱物が25%、3.化学製品が12%、1.農林水産品・食料品が10%、残りが20%です。
出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
輸入品の具体的な商品を見ますと、2020年では27.石油天然ガス等が17%、85.電気機械が15%、84. 一般機械が11%、30.医療用品が5%、90.精密機械が4%です。
日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っているため、原油や天然ガスの価格の変動はそのまま日本の輸入額増加へ寄与します。
そのため原油価格が上がった2000年後半から2010年前半は27.石油天然ガス等のシェアが増加し、一時は35%に達しています。
出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
そのほか85.電気機械のシェアが4%から15%へ拡大していますが、近年ではスマートフォンの輸入が多く寄与しており、2020年では輸入全体の4%近くを占めています。
貿易相手国の構成
次に貿易相手国を確認します。以下は2020年の貿易相手シェアを表します。
日本の最大の輸出相手国は今ではアメリカから中国へ変わり、輸出全体の22%が中国向けとなっています。
また、2位のアメリカは19%とこの2か国で40%以上を占めます。
なお、上位10カ国で輸出の81%、上位30か国で94%を占めています。
出所:UN comtrade.
また、最大の輸入相手国も中国であり輸入全体の26%を占めます。
日本はエネルギーの輸入は大きいが、輸入相手国のリスクヘッジはおこなっているため、産油国であるサウジアラビアやUAE、インドネシアなどは3%以下に留まっています。
さいごに
日本の貿易の特徴は以下のとおりです。
- 過去50年ではほとんどの年次で貿易黒字。ただし、2016-2019年では貿易黒字シェアが減少
- 主な輸出品は自動車や電気機械などの機械類。ただし、一貫して減少傾向
- 主な輸入品は石油天然ガス、電気機械など。
- 主な輸出相手国および輸入相手国は中国とアメリカ
アフリカ諸国の参考としてご覧ください。