マダガスカルの貿易:貿易収支、輸出・輸入の構成について。主な輸出品や輸入品は何?

今回はマダガスカルの貿易について整理します。

なお関税率については以下の記事を参照ください。

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マダガスカルの基本情報

マダガスカルはアフリカ南東部沖に浮かぶ島国です。位置については地図のとおりです。

アフリカ大陸に比べると小さく見えますが、日本の1.6倍の国土を持つ大きい国です。

 

マダガスカルの人口は2016年時点で約2,500万人で、アフリカでは比較的人口の多い国です。

 

一人あたりGDPは2016年時点で1,500ドルとアフリカ平均の5,000ドルの3割程度とアフリカでも低位の国です。

アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。

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貿易収支の推移

早速ですが、以下は1970年以降のマダガスカルのGDPに占める輸出、輸入および貿易収支のシェアになります。

出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”

 

マダガスカルは1970年代半ばまでは貿易黒字でしたが、1978年に-9%の貿易収支に転じ、それ以降はほとんどの年次で貿易赤字となっています。

特に2000年以降は貿易赤字幅は広がり、2009年には-22%の貿易赤字でした。なお、直近である2019年は-6%まで縮小しています。

 

輸出の構成

以下は1990年以降のマダガスカルの輸出品の構成です。

マダガスカルはもともと1. 農林水産品・食料品が大部分を占めていましたが、1990年代半ばから5.繊維・アパレルが拡大し、また、2010年代には7.金属製品の輸出が盛んとなっています。

2019年の輸出の構成は、1. 農林水産品・食料品が38%、5.繊維・アパレルが20%、7.金属製品が21%、残りが21%です。

 

出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。

 

 

以下は上記の10分類を100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げています。

マダガスカルの最大の輸出品は9.コーヒー、茶、香辛料です。具体的にはバニラとグローブ(チョウジ)でそれぞれ輸出全体の22%、3%を占めます。

 

出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。

 

マダガスカルはインドネシアと並ぶバニラの2大産地です。また、バニラは「緑の金(グリーン・ゴールド)」と言われるほど高価なスパイスとして知られています。

ロイターによると、2017年には1キロ635ドルを記録している。

Reuters Japan

1キロのバニラは、1キロの銀よりも高価だ。ラン科バニラという植物を何年もかけて丁寧に栽培して収穫されるバニラは、サフラン…

 

 

また、2012年以降拡大している75.ニッケルはAmbatovy鉱山から算出されるものと思われます。

Ambatovy鉱山は日本の住友商事、韓国のKores社グループおよびカナダのDynatec社により共同開発されたマダガスカル初の大型開発された鉱山で、ニッケルのほかコバルトも産出しています。

 

 

マダガスカルは5.繊維・アパレルの輸出も盛んですが、杉本星子 (京都文教大学)によるとマダガスカルのファッション産業について以下のように説明しています。

1990年代以降、すなわちマダガスカルが世界的なファッション産業のシステムへと組み込まれた時期である。欧米系テキスタイル企業のマダガスカル再進出とともに、マダガスカルのファッション関連産業も発展した。マダガスカル人デザイナーやモデルが活躍し、デザイナーズ・ブランドも次々と生まれた。各地でミス・コンテストが盛況のうちに行われ、モデル・クラブもできた。欧米の最新モードが即座に取り入れられるだけではなく、マダガスカルからもモードが発信されるようになったのである。他方、マダガスカルの重要な産業であるツーリズムの振興は、伝統的なローカル・ファッションに観光資源としての新たな価値を付与することにもなった。また、キリスト教ミッションが貧しい女性の生活を助けるために教えたレース刺繍やカットワーク刺繍がマダガスカルの物産となった。

 

このような背景のものと、1990年以降アパレルの輸出が増加したと考えられます。

 

輸入の構成

一方、輸入の構成については以下のようになっています。

2019年の輸入の構成は、8.機械が21%、2. 鉱物が20%、1.農林水産品・食料品が17%、5.繊維・アパレルが16%、3.化学製品が13%、残りが13%です。

出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。

 

輸入品の具体的な商品を見ますと、2019年では27.石油天然ガス等、84.一般機械がそれぞれ17%と8%、87.自動車、85. 電気機械が6%と5%です。

出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。

 

マダガスカルでは油田が確認されているものの開発は進んでおらず、現状ではエネルギー資源はほぼ輸入に依存しており、2019年では最大の輸入品目となっている。

また、同年の2番目および3番目に多く輸入している品目は米と医薬品でともに輸入全体の3%超を占めている。

 

貿易相手国の構成

次に貿易相手国を確認します。以下は2019年の貿易相手シェアを表します。

 

マダガスカルの最大の輸出相手国はフランスで輸出全体の20.2%に相当します。マダガスカルはもともとフランスの植民地であったこともあり関係性が密だと思われます。なお、2番目はアメリカで19.8%です。アパレル企業のGapはマダガスカル産の製品が多いですが、このような要因もありアメリカへの輸出が多くなっているのかもしれません。

なお、上位10カ国で輸出の77%、上位30カ国では98%を占めています。(なお、日本は6.2%で上位4番目です)

 

出所:UN comtrade. 

 

 

一方、最大の輸入相手国は中国で全体の17.5%を占めており、2番目はフランスで12.8%です。

上位10カ国では67%、上位30カ国では86%を占めます。(なお、日本は0.5%で上位30番目です)

 

さいごに

マダガスカルの貿易の特徴は以下のとおりです。

  • 基本的には1980年以降貿易赤字であり、特に2009年には-22%の貿易赤字となり、2019年は-6%まで縮小している
  • 主な輸出品はバニラ、ニッケル、アパレル製品
  • 最大の輸出相手国はフランスおよびアメリカ、一方最大の輸入相手国は中国

以上となります。引き続き他の国についても調べています。

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