今回は南アフリカの一般政府における財政(歳出、歳入、税収、債務)について簡単に整理します。
また、歳出については、その内数にあたる軍事についても別途扱います。
南アフリカの基本情報
南アフリカの人口は2016年時点で約5,500万人とアフリカでは6番目に人口の多い国です。
人口密度は45人/km2とアフリカ平均の40人/km2とほぼ近い水準にあります。
一人あたりGDPは2016年時点で13,000ドルとアフリカ平均の5,000ドルの2倍以上です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
歳入・歳出比率(対GDP比)
以下はアフリカ諸国および参考国(日本、米国、中国)におけるGDPに対する※歳入(左図)・歳出(右図)比率のランキングを示しています。(カッコ内はデータが取得できる最新年を示しています。)
(ただし、ここの歳入にはデータの都合により助成金は含まれていません。)
南アフリカの直近のデータを見ると、GDPに占める歳入比率27.9はアフリカ諸国の中では6位と比較的上位に位置しており、日本よりも8ポイントほど高い水準にあります。
一方、歳出については38.2と歳入に比べて水準はさらに高く、アフリカ諸国において2位と歳入の順位からさらに上がっています。
またその歳出比は米国の32.2よりも6ポイントほど高い水準です。
出所:World Development Indicators, December 2022.
次に、以下は南アフリカの一般政府におけるGDPに対する※歳入・歳出比率の推移を表しています。
(ただし、ここの歳入にはデータの都合により助成金は含まれていません。)
南アフリカの歳入および歳出は1970年代以降一貫して上昇傾向にあります。
また、収支構造については1970年代では黒字構造となっていましたが、1980年代から赤字構造へ転じており、直近では歳入に比べて歳出の方が10ポイントほど歳出が多くなっています。
なお、歳入の内数にあたる税収も歳入と同様にGDP比では上昇傾向にあり、1970年代前半の15ほどから直近では25ほどまで上昇しています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
さらに歳入(左図)と歳出(右図)の内訳の構成比の推移を表しているのが以下のグラフです。
(なお、一部の年次でデータが欠落しています。)
歳入については、1970年代から所得税・資産課税がもっとも多くのシェアを占めていますが、そのシェアはかつては60%ほどありましたが、直近では50%以下まで低下しています。
一方で、かつては2割ほどしかなかった商品税は1990年には35%ほどまで急増しており、直近でもそのシェアを維持しています。
この2つの税が歳入のおおよそ8割を占めており、主な財源となっています。
歳出については非常に変動が激しく、1970年代・1980年代では雇用者報酬や財サービスなどが多くを占めていましたが、2000年代においては補助金・その他移転がもっとも多くのシェアとなっており、全体の6割ほどを占めるほど拡大しています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
一般政府の軍事費
以下はアフリカ諸国と参考国における一般政府の軍事費比率のランキングを示しています。(左図は対GDP比、右図は対政府支出比)
南アフリカのGDPに対する軍事費は0.9%でアフリカ諸国の中では42位、また、対政府支出比では2.3%でアフリカ諸国の中では45位と、比較的下位に位置しています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
推移をみると1960年代では対GDP比では1%程度であった軍事費は1970年代後半には5%超まで急増しています。
しかし、1980年代後半以降は減少し、近年では1%以下まで低下しています。
また、対政府支出比で見れば2000年前半には6%ほどありましたが、直近では2%ほどまで低下しています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
総債務比率(対GDP比)
次に以下のグラフはアフリカ諸国および参考国の政府の総債務比(GDP=100)のランキングを占めています。
なお、総債務に対し、そこから債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものを純債務と言います。
南アフリカのGDPに対する総債務比は40であり、(データの確認できる)アフリカ諸国の中では16位と比較的下位に位置しています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
(確認できるデータの推移をみる限り、)過去の総債務比の推移は1990年ではGDPを100とすると総債務は33ほどでしたが、1995年には45まで上昇しましたが、2000年には40まで改善させています。
出所:World Development Indicators, December 2022.
さいごに
今回は一般政府における歳出と歳入の構成や、税収および債務の推移などを整理しました。
なお、今後の歳出・歳入や債務について予測については以下の記事で扱っていますので、是非ご参照ください。
今回は南アフリカの経済予測について取り上げます。 使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。 WEOでは最新のデータに基づき予測を毎[…]