今回はアフリカとの比較の参考国として米国(アメリカ)の貿易について整理します。
米国(アメリカ)については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。
なお関税率については以下の記事を参照ください。
貿易収支の推移
早速ですが、以下は1970年以降の米国(アメリカ)のGDPに占める輸出、輸入および貿易収支のシェアを表します。
出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”, December 2021
過去50年では1970年代後半以降、常時貿易赤字となっており、2000年代中盤には-5%ほどまで赤字収支は拡大していますが、直近には-3%程度まで貿易赤字は縮小しています。
輸出の構成
以下は1991年以降の輸出品の構成です。
米国(アメリカ)の主な輸出は8. 機械が大半を占めていますが、そのシェアは1991年の50%程度から2021年には40%程度まで縮小しています。
その代わりに2000年代後半のシェールガス革命により、2.鉱物の輸出シェアは拡大し始め、2005年では4%ほどのシェアは2021年には14%まで急増しています。
出所:UN comtrade, December 2022. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
以下は上記の10分類を100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げています。
輸出品の上位は機械類ですが、減少傾向にあります。特に2000年あたりから84.一般機械と85.電気機械の輸出が急激に減少しています。
しかし、同じ機械類でも87.自動車や90.精密機械についてはシェアを維持しています。
一方で、上で取り上げたシェールガスの採掘により27.石油天然ガス等の輸出は2000年の2%から急増し、2021年には14%と最大の輸出品目となっています。
出所:UN comtrade, December 2022. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
輸入の構成
一方、輸入の構成については以下のようになっています。
2021年の輸入の構成は、8.機械が43%、3.化学製品が14%、10.その他の製造品が10%、残りが45%です。
出所:UN comtrade, December 2022. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
輸入品の具体的な商品を見ると、2021年では84. 一般機械が15%、85.電気機械が14%、87.自動車が10%と機械類が輸入品の大半を占めており、その傾向は1991年以降ほぼ変わっていません。
一方で、2000年代後半には一時は輸入の23%も占めていた27.石油天然ガス等については、国産のシェールガスの生産が始まったことで、2021年には8%まで輸入は減少しています。
また、1991年にはほぼ輸入していなかった30.医薬品は2021年には5%ほどまで輸入が増加しており、近年でも5番目に輸入の多い品目となっています。
出所:UN comtrade, December 2022. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
貿易相手国の構成
次に貿易相手国を確認します。以下は2021年の貿易相手シェアを表します。
米国(アメリカ)の最大の輸出相手国は隣国カナダであり、輸出全体の18%を占めています。
また、2位も隣国のメキシコの16%であり、アメリカの輸出は隣国の2か国で輸出全体の1/3を占めています。
3~5位は中国、日本、韓国とアジア向けとなっており、この3か国で17%を占めます。
なお、上位10カ国で輸出の65%、上位30か国で88%を占めていますが、上位30位にはアフリカ諸国は含まれていません。
出所:UN comtrade, December 2022.
次に、最大の輸入相手国は中国であり輸入全体の19%を占めます。
最大の輸出相手国である隣国のメキシコ、カナダは2~3位であり、合わせて26%を占めています。
なお、上位10カ国の輸入は69%、上位30か国で91%を占めていますが、上位30位のうちアフリカ諸国は南アフリカのみとなっています。
さいごに
米国(アメリカ)の貿易の特徴は以下のとおりです。
- 過去50年ではほとんどの年次で貿易赤字であり、直近は-3%の赤字収支
- 主な輸出品はかつては自動車や電気機械などの機械類だったが、現在は石油天然ガス等
- 主な輸入品は電気機械、また医薬品も輸入が急増中
- 主な輸出相手国は隣国カナダ、メキシコ、輸入相手国は中国
アフリカ諸国の参考としてご覧ください。