今回はアフリカとの比較の参考国として日本の旅行関連のデータについて整理します。
日本については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。
(本来日本については詳細なデータを長期で利用できますが、ここでは比較しやすいようにアフリカ諸国と同一のデータベースを用いて比較します。)
アフリカ諸国における外国人観光客数ランキングと日本の比較
以下は直近における日本とアフリカ諸国における外国人観光客の受け入れ人数のランキングです。
出所:World Bank “World Development Indicators” 注:国名後のカッコ内はデータの利用年次を表す。
2019年における日本を訪れた外国人観光客数は3,200万人です。
アフリカでもっとも外国人観光客が多い南アフリカ(1,500万人)と比較すると倍以上となっています。
日本を訪れる外国人観光客数と日本人海外旅行客数
以下は1995-2019年の日本を訪れた外国人観光客数と日本人の海外旅行客数を表します。
日本を訪れた外国人観光客数は1995年は300万人超ほどでしたが、2019年には3,200万人超まで増加しており、たった25年で10倍以上も増加しています。
同期間における増加率はOECD加盟国ではアイスランドに次いで2番目に高く、近年では観光政策が成功している国と言えそうです。
なお、同期間における全世界の増加率は2.2倍、アメリカは2.1倍、中国は3.5倍、韓国は4.7倍でした。
出所:World Bank “World Development Indicators”
一方、日本人の海外旅行客は過去25年で30%ほど増加しており、年平均では1.1%ほどしか増加していません。
(一方、日本を訪れた外国人観光客数は年平均9.4%の増加です。)
日本は外国人観光客を受け入れることによる国際化は進んだと言えますが、日本が海外へ行く国際化は進んでいないと言えるかもしれません。
日本の旅行によるサービス貿易収支
外国人観光客の旅行による消費は通常サービスの輸出として捉えられます。また、逆に自国民の海外旅行での消費はサービスの輸入として扱われます。
以下は、そのサービス輸出とサービス輸入のGDPにおけるシェアを表します。
出所:World Bank “World Development Indicators”に基づく推計値
日本はもともと外国人観光客よりも日本人の海外旅行客の方が多くことから、旅行によるサービス貿易は赤字収支でしたが、
過去25年で日本を訪れる外国人観光客が急増したことから、サービス輸出が増加し、2015年には旅行によるサービス貿易は黒字へ転じています。
2019年にはGDPの0.4%ほどが旅行によるサービス貿易によるものとなっています。
日本の旅行者あたり消費額
上記のサービス貿易は旅行者全体の消費額を表すため、それを旅行客数で除することで旅行客一人当たりの消費額を試算することができます。
以下は、日本を訪れる外国人観光客一人当たりの消費額(=サービス輸出/外国人観光客数)と日本人海外旅行客一人当たりの消費額(=サービス輸入/日本人海外旅行客数)の推移を表しています。
出所:World Bank “World Development Indicators”に基づく推計値
日本を訪れる外国人観光客一人当たりの消費額は過去25年で3,000ドルから1,500ドルと半減しています。
過去25年で外国人観光客が増加した背景には、客層が比較的富裕層から一般層まで拡大したことによるのかもしれません。
また、日本人の海外旅行客一人当たりの消費額も2005年から2019年では2,300ドルから1,500ドルまで減少しています。
特に2011年以降からは減少傾向にありますが、これは近年継続した円安によるものと考えられます。(2011年から2019年では1ドル80円から109年まで円安となっています)
さいごに
日本の旅行についてまとめると以下のとおりです。
- 日本を訪れる外国人観光客数は1995年から2019年では1,500万人から3,200万人まで増加
- 旅行によるサービス貿易の2015年には貿易黒字へ転化
- 外国人観光客一人当たりの消費額は過去25年で3,000ドルから1,500ドルと半減