今回はアフリカとの比較の参考国として日本の産業について整理します。
日本については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。
(本来日本については詳細なデータを長期で利用できますが、ここでは比較しやすいようにアフリカ諸国と同一のデータベースを用いて比較します。)
日本の人口構成についてはこちらをご覧ください。
今回はアフリカとの比較の参考国として日本の人口構成にフォーカスしてみます。 日本については既に知っていることも多いと思いますが、改めてアフリカ諸国と同一の分析フレームで確認しようと思います。 (本来日本については詳細なデータを長[…]
産業別GDP構成比
早速ですが、以下は日本の1970年から2019年までの産業別のGDP構成比の推移を表します。
出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”
日本は1970年以降一貫して3.製造業と1.農業のGDPシェアは減少し、その代わりに7.サービスのGDPシェアが拡大してきました。
現在ではサービス業のGDPは一国全体の一国全体の43%を占めるほどとなっています。
産業別GDP寄与度
以下はGDPにおける産業別寄与度を表します。
(なお、ここでは5年平均を採用してます。また、ここでの産業GDPと一般的に用いるマクロのGDPとでは統計上の誤差により乖離が生じています。)
出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”に基づく推計値
日本は1970-1990年では年平均5%程度の経済成長を実現してきました。
この時の主な経済成長の要因は3.製造と5.商業・レストラン・ホテルでした。商業については、製造品を流通させる役割を果たすため製造業の成長と連動する特徴があります。
バブル崩壊後は経済成長は1%前後と急激に経済成長が鈍化しています。
この時期での経済成長の要因は7.サービスが大半を占めますが、サービス業は中間財や資本財を多く用いる製造業と異なり、労働集約的な産業が多いです。
そのためサービス業の発展は他の産業への波及が限定的となり、経済全体の成長には繋がりずらいのが特徴です。
産業別就業者数シェア
以下は1991年から2019年の産業別就業者数のシェアを表します。
出典:ILO Modelled Estimatesに基づく推計
就業者数シェアの推移はGDPシェアの推移と類似しています。
現在の日本では、就業者の40%は7.サービス業の従事しています。
産業別労働生産性(産業別就業者あたりGDP)
以下は2019年における産業別の労働生産性(産業別の就業者一人あたりGDP)を米ドル換算で表しています。
(なお労働生産性といっても、測定の方法は様々あります。より望ましい測定方法をアフリカ諸国に適応するにはデータ制約から困難であるため、ここでは簡易な方法として分子には為替レート換算した産業別GDP、分母には産業別就業者数を用いています。
日本における詳細な産業別生産性については、日本資産性本部や経済産業研究所のJIPデータベース、慶應義塾大学のKEOデータベースを参照ください。)
出典:ILO Modelled EstimatesおよびUN “The National Accounts Main Aggregates Database”に基づく推計
2019年における日本全体の労働生産性は75,000ドルほどですが、産業によりそれは大きく異なります。
もっとも労働生産性が高い産業は2. 鉱業・電ガス水であり、労働生産性は431,000ドルほどです。
また、日本の2.製造業は自動車や電気機械、化学製品など付加価値の高い産業が多いため、労働生産性は96,000ドルほどあります。
一方、労働集約的な1.農業や、自営業主の多い5.商業・レストラン・ホテルは大型な設備投資を必要としないため労働生産性が低くなっています。
特に農業は、狭い土地により設備投資もおこないづらく、また国からの補助金や関税による保護政策により生産性の向上を必要としない要因もあり、他の産業と比べて著しく低い生産性となっています。
さいごに
日本の産業構造についてまとめると以下のとおりです。
- 産業別GDPシェアおよび就業者数シェアは一貫して、7.サービスが拡大し、1.農業、3.製造業が減少。現在では7.サービスが全体の40%ほどを占める
- 経済成長が年平均5%と高かった1970-1990年では3.製造業や5.商業・レストラン・ホテルが経済成長の主な要因でしたが、バブル崩壊後の低成長下(年1%程度)では7.サービスがもっとも寄与度が大きい
- 労働生産性が高い産業は2.鉱業・電ガス水、3.製造業、一方労働生産性の低い産業は1.農業
アフリカ諸国の参考としてご覧ください。