今回はエチオピアの貿易について整理します。
なおエチオピアの関税率については以下の記事を参照ください。
今回はエチオピアの関税率について整理します。 関税率などのデータはWTO Statが公表している、最恵国待遇相手における関税率や免税率などを用いています。 なお、貿易について以下の記事を参照ください。 […]
貿易収支の推移
早速ですが、以下は1990年以降のエチオピアのGDPに占める輸出、輸入および貿易収支のシェアを表します。
出所:UN “The National Accounts Main Aggregates Database”
エチオピアは1990年代以降貿易赤字が拡大し、2006年には-37%の貿易収支となっています。その後は貿易赤字は緩やかに縮小傾向に転じ、2019年には-21%まで縮小しています。
その背景にはエチオピアの高い経済成長が起因しています。
1990年代、2000年代、2010年代の平均経済成長率は3.0%、8.7%、9.5%と高成長を背景に、それによる内需の拡大から輸入が増大し貿易赤字が拡大しているものと考えられます。
輸出の構成
以下は1995年以降のエチオピアの輸出品の構成です。
エチオピアの主な輸出はほぼ1. 農林水産品・食料品が占めます。
2018年の輸出の構成は、1. 農林水産品・食料品が75%、8. 機械が10%、残りが15%です。
近年では8.機械の輸出が拡大してますが、その多くは携帯電話です。エチオピアでは2007年には中国系スマホメーカー「SMADL」、2010年には中国系スマホメーカー「ZTE」、2012年には香港系スマホメーカー「Tecno」、2014年には韓国系スマホメーカー「サムスン」がスマホの生産を開始しており、それを反映して8.機械が拡大してます。
出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
以下は上記の10分類を100分類弱に細分化した分類の上位5品目を取り上げています。
もっとも輸出が多いのは9. コーヒー、茶、香辛料(ここではほぼコーヒー)で2017年では25%を占めます。
また近年12. 採油用種及び果実(具体的にはゴマ)の輸出も増加しており、1995年では輸出全体の2%だけでしたが、2018年では21%まで拡大しています。
出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
また、7. 野菜や2.肉(主に羊肉)の輸出も拡大しており、1995年ではそれぞれ4%と0%でしたが、2018年では18%と7%まで拡大しています。
輸入の構成
一方、輸入の構成については以下のようになっています。
2018年の輸入の構成は、8.機械が37%、3.化学製品が17%、1.農林水産品・食料品が15%、2. 鉱物が10%、残りが20%です。
出所:UN comtrade. 注:HSコードの最も粗い21分類を10分類へ集計している。
輸入品の具体的な商品を見ますと、2018年では84. 一般機械が16%、27.石油天然ガス等が10%、85.電気機械が8%、88.航空機と87.自動車がともに6%です。
出所:UN comtrade. 注:分類名称の数字はHSコード2桁を表す。
特に2015年以降航空機の輸入が増加していますが、これは2014年にエチオピア航空がボーイングの737 MAX 8を20機(カタログ価格で総額21億ドル(約2289億円)相当)を発注したこと等によると思われます。
なお、この時輸入したボーイング機については、2019年に墜落事故を起こし問題となっています。
貿易相手国の構成
次に貿易相手国を確認します。以下は2018年の貿易相手シェアを表します。
エチオピアの最大の輸出相手国は中国とサウジアラビアでそれぞれ輸出全体の8.9%に相当します。
3-5番目はアメリカ、UAE、イスラエルで、この上位5か国で輸出全体の38.8%を占めます。(日本は10位で3.3%を占めます)
なお、上位10カ国で輸出の59%、上位30カ国では90%を占めています。
出所:UN comtrade.
最大の輸入相手国も中国で全体の28.3%を占めており2位のアメリカ(10.7%)の倍以上に相当します。(なお、日本は6位で3.3%を占めます)
上位10カ国では72%、上位30カ国では95%を占めます。
さいごに
エチオピアの貿易の特徴は以下のとおりです。
- 1990年以降一貫して貿易赤字
- 主な輸出品はコーヒーやゴマに加え、近年ではスマホの輸出も拡大
- 主な輸入品は石油天然ガス、機械類に加え、近年は航空機が増加
- 主な輸出相手国は中国、サウジアラビア、アメリカ、UAE、イスラエル
- 最大の輸入相手国は中国で、次ぐのアメリカのおよそ倍以上に相当
以上となります。引き続き他の国についても調べています。