今回はチュニジアの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
チュニジアの基本情報
チュニジアはアルジェリアとリビアの間に位置する北アフリカの国です。
チュニジアの人口は2016年時点で約1,100万人とアフリカでは平均的な規模の国です。一方、人口密度は70人/km2とアフリカ平均の40人/km2の2倍近いです。
一人あたりGDPは2016年時点で11,500ドルとアフリカ平均の5,000ドルの2倍以上とアフリカでは比較的裕福な国です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
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GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、チュニジアは長期では9番目の4.6%とやや高い水準ですが、2000年以降においては45番目の2.1%と低い成長となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、チュニジアは32%と日本より20ポイント以上低い水準であり、アフリカでは35番目の水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると、1970年以降ほぼ横ばいに推移しています。
一方、就業者数自体は人口増加に伴ない就業者数は100万人から350万人へ大幅に増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
労働の構成について気になる方は以下の記事もご覧ください。
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資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はチュニジアのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960~1980年には20%弱ほどありましたが、1980年代半ばには10%を切る時期もありました。
その後投資シェアは2010年にかけて上昇傾向にありましたが、その後は再度10%程まで下落しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
名目資本ストックは投資シェアの変動に連動して、上下に大きく変動しています。
一方、実質資本ストック比率は徐々に減少傾向にあります。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、チュニジアは2.7とアフリカでは27番目であり、資本ストックは平均的水準とあると考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
チュニジアでは、1960年代後半から1970年代前半にかけて高い経済成長を遂げており、その1/3以上はTFPが寄与しています。
しかし、1980年以降ではTFPは小さくなり、その結果経済成長は鈍化しています。
なお、資本投入や労働投入は一貫してプラス成長で推移しており、その結果経済成長自体は安定しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
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