今回は国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)が2023/6/21に公表した持続可能な開発報告書2023(Sustainable Development Report 2023)を使って、エスワティニのSDGs指標を見ていきたいと思います。
なお、SDGs(持続可能な開発目標)については以下の17つのGoalが設定されており、上記の報告書ではこのGoalに関して定量的な指標を公表しています。
なお、SDGsについては日本ユニセフ協会のHPにてわかりやすく紹介されていますので、よろしければご覧ください。
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エスワティニの基本情報
エスワティニは南アフリカ、モザンビークを隣国にもつアフリカ南部の国です。
かつてはスワジランドと呼ばれていましたが、2018年にエスワティニと改名しました。
エスワティニの人口は2016年時点で130万人とアフリカでは比較的人口の少ない国です。
一方、人口密度は75人/km2とアフリカでは比較的人口密度の高い国です。
また、一人あたりGDPは2016年時点で8,500ドルとアフリカでは比較的高い国です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
SDGs指標ランキング
以下はアフリカ諸国におけるSDGs指標(総合指数)の2000年および2022年のランキングを表しています。
指標は0~100点で評価され、2000年ではスウェーデンが84点が最高点となっており、2022年ではフィンランドが87点で最高点となっています。
なお、括弧内の順位は全世界での順位を表し、日本は2000年では75点で11位でしたが、2022年ではスコアは79点へ上がっているものの順位は21位へ落としています。
また、ここでは参考国として米国と中国も併記しています。
エスワティニのSDGs指標は2000年では48点でアフリカ諸国内では20位(世界では134位)でしたが、2022年では指標は58点へ上がっていますが順位は19位(世界では132位)とほぼ変わっていません。
アフリカ諸国におけるSDGs指標ランキング(左図:2000年、右図:2022年)
出所: Sachs, J.D., Lafortune, G., Fuller, G., Drumm, E. (2023). Implementing the SDG Stimulus. Sustainable Development Report 2023. Paris: SDSN, Dublin: Dublin University Press, 2023. 10.25546/102924
時系列推移
以下は2000年以降におけるエスワティニのSDGs指標の推移を表します。
ここでは、上記のランキングで用いた総合指数と各17Goalの指数の推移を表しています。
総合指数は2000年以降48点から58点へ上がっていますが、それぞれの指標を見ると
- 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに (40→71)
- 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう (13→41)
- 11. 住み続けられるまちづくりを (67→87)
- 4. 質の高い教育をみんなに (55→74)
- 3. すべての人に健康と福祉を (23→36)
- 5. ジェンダー平等を実現しよう (58→70)
- 6. 安全な水とトイレを世界中に (39→51)
- 1. 貧困をなくそう (23→34)
の8ゴールは10点以上スコアが上昇している一方で、
- 12. つくる責任つかう責任 (86→85)
- 10. 人や国の不平等をなくそう (14→12)
- 2. 飢餓をゼロに (56→50)
の3ゴールについてはスコアが低下しています。
注:項目名の後ろに付く括弧内の数字は2000年と2022年のスコアを表します。
エスワティニのSDGs17指標の推移
出所: Sachs, J.D., Lafortune, G., Fuller, G., Drumm, E. (2023). Implementing the SDG Stimulus. Sustainable Development Report 2023. Paris: SDSN, Dublin: Dublin University Press, 2023. 10.25546/102924
また、以下は17つのGoalの内訳にあたる詳細な指標(全98指標)について、2000年および2022年の変化を表しています。
エスワティニのSDGs詳細指標(2000年 vs 2022年)
出所: Sachs, J.D., Lafortune, G., Fuller, G., Drumm, E. (2023). Implementing the SDG Stimulus. Sustainable Development Report 2023. Paris: SDSN, Dublin: Dublin University Press, 2023. 10.25546/102924
これを見ると、37の指標はスコアを上げている一方で、18の指標はスコアを下げています。特に
- 51. SDG9. インターネット利用人口 (0→100)
- 38. SDG7. 安全に管理された衛生サービスを利用している人口(%) (12→78)
- 50. SDG9. 全季節道路を利用できる農村人口(%) (0→58)
- 58. SDG11. 高齢者の貧困率(66歳以上人口に占める割合) (38→88)
- 84. SDG16. 殺人件数(人口10万人当たり) (37→84)
といった指標は大幅に改善している一方で、
- 22. SDG3. WHOが推奨するワクチンを2回接種した乳児の生存率(%) (73→61)
- 85. SDG16. 未決拘禁者(刑務所人口に占める割合) (16→2)
- 6. SDG2. 肥満(BMI30以上)の有病率(成人人口の割合 (76→58)
- 24. SDG3. 主観的幸福度(平均ラダースコア、ワースト0-ベスト10) (37→5)
- 7. SDG2. 人間の栄養レベル(ベスト2~3ワースト) (51→0)
といった項目は大幅にスコアを下げる結果となっています。
注:項目名の後ろに付く括弧内の数字は2000年と2022年のスコアを表します。
さいごに
国内では法政大学の川久保研究室がSDGsについて研究に取り組んでいますので、よろしければそちらもご覧ください。