今回はエジプトの経済予測について取り上げます。
使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。
WEOでは最新のデータに基づき予測を毎回改訂していますので、過去のデータを顧みることで予測の不確実性を理解したうえで有益なツールとして使用することが望まれます。
エジプトの基本情報
エジプトの人口は2016年時点で
約9,300万人とアフリカでは3番目に人口の多い国です。
人口密度は93人/km2とアフリカ平均の40人/km2の2倍以上です。
一人あたりGDPは2016年時点で12,000ドルとアフリカ平均の5,000ドルの2倍以上です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
国際比較ランキング
GDP成長率
以下のグラフは2021~2027年におけるアフリカ諸国の実質GDP成長率のランキングを示しています。
また、参考国として米国と日本を並記しています。当該期間では、米国は2.2%、日本は1.2%と予測されており、アフリカ諸国と比較すると非常に低水準となっています。
エジプトに関しては、同期間では5.2%ほどの経済成長を見込まれており、アフリカ諸国の中では17番目に高い水準となっています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去における経済成長について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はエジプトの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。 成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Fa[…]
時系列推移
GDP成長率・一人あたりGDP
以下は2000年以降のGDP成長率(左図)および世界に占めるGDPシェア(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
エジプトのGDP成長率は2000年以降2-7%の間で推移しており、過去のWEOについてもこの範囲で収まっています。
WEOの2006年9月版のGDP成長率予測は実績値と近似していますが、その他のWEOの予測は実績とは明らかに乖離が見られます。
なお、直近のWEOによると2022年と2023年のGDP成長率は6.6%、4.4%とみられており、2027年の5.9%にかけて徐々に加速すると予測されています。
また、世界に占めるGDPシェアを見えると、水準の改訂はあるものの、推移としては予測値と実績値でおおよそ類似しています。
GDPシェアは2000年では0.8%ほどでしたが、2021年では1.0%であり、さらに2027年には1.1%ほどまで拡大すると見られています。
なお、水準が上昇改訂しているのは、GDP統計は随時データの推計方法や会計概念が拡張するため、その影響によるものと考えられます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
次に以下のグラフは一人あたりの実質GDPの推移を表しています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
単位は国際比較で用いられる2017年PPP換算(米ドル)を用いています。PPPについては以下の記事でまとめていますので、こちらも参照ください。
今回はアフリカ各国の物価の違いについて整理します。 国際間の物価の違いを表す経済データとして、購買力平価(PPP)というものがあります。今回はこのPPPを用います。 購買力平価(PPP)とは 総務省によると ※ 購買力平価(Pu[…]
一人あたりGDPについては、2000年では8,000ドルほどでしたが、2021年では13,000ドルとなり、2027年には16,000ドルほどまで上昇すると見込まれています。
インフレ率
以下は2000年以降の年次インフレ率(左図)および2000年を基準としたインフレ指数(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
エジプトのインフレ率は変動はありつつも2000年以降徐々に加速しています。
特に2017年には前年の11月に変動相場制へ移行した影響により24%ほどまでインフレが加速しています。
その後のコロナ禍においては経済が低迷したこともありインフレ率は5%程度まで減速しています。
直近のWEOによると、2022年から2023年にかけてインフレ率は上昇すると見られていますが、2027年には7%ほどにまで収束すると見られています。
またインフレ指数をみると、おおよそ過去のWEOの推移は実績値と近似していることが確認できますが、2015年4月版時の予測では2017年の急激なインフレは予測できず、乖離が見られます。
インフレ指数は2000年を100とすると、2021年では700ほどとなっており、さらに2027年には1,100ほどまで上昇すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の物価変動について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はエジプトのCPIおよびデフレータについて整理します。 なお、ここでは国内での物価の成長率について取り上げます。 物価水準の国際比較については、以下の記事などを参照ください。 [sitecard subtitle=関連[…]
失業率
以下は2000年以降の失業率の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
エジプトの失業率はおおよそ9-13%の間で推移していますが、2021年では7.3%まで低下し、直近のWEO2022/10では2027年には6.7%まで改善すると見込まれています。
過去のWEOの予測を見るとコロナ禍の2021年4月版を除けば、予測の精度は高いため、今度の失業率の低下傾向の可能性は高いと思われます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の失業率や労働について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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政府の歳入歳出・負債
以下は2000年以降の政府の歳入(左図)と歳出(右図)の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
2000年ではGDP比で23%ほどの歳入、26%ほどの歳出と赤字収支構造となっており、2021年ではそれぞれ19%と26%とさらに赤字収支は拡大しています。
さらに直近のWEOの予測では2027年ではそれぞれ21%と27%と見込まれており、赤字収支構造は継続すると見られてます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
さらに以下は政府の総負債(左図)と純負債(右図)の推移を表しています。
なお、純負債は総負債から債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものをさします。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
エジプトのGDPに対する総負債比と純負債比は2000年ではそれぞれ72と45ほどでしたが、2021年には89と84まで上昇していますが、直近のWEOでは2027年にはそれぞれ80と75へ減少すると見込まれています。
さいごに
今回使用しているWEOは常時データを改訂しています。
特に近年では新型コロナの状況により予測値が大幅に改訂することありますので、新型コロナについて状況を知りたい場合は以下の記事を参照ください。
今回はエジプトの新型コロナの感染状況について簡単に整理します。 エジプトの基本情報 エジプトの人口は2016年時点で 約9,300万人とアフリカでは3番目に人口の多い国です。 人口密度は93人/k[…]