今回はセーシェルの人口構成にフォーカスしてみます。
なお、他の国との人口規模については、こちらで比較しております。
セーシェルの基本情報
セーシェルはインド洋に浮かぶ島国でアフリカでは有数のリゾート地で知られています。そのためホテルやレストランの物価はアフリカでも著しく高いです。
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セーシェルの人口は2016年時点で約10万人とアフリカではもっとも人口の少ない国です。
一方、国土もアフリカでもっとも狭いため、人口密度は211人/km2とアフリカ平均の40人/km2の5倍以上であり、アフリカでも5番目に密度の高い国です。
一人あたりGDPは2016年時点で27,000ドルとアフリカ平均の5,000ドルの5倍以上あり、アフリカでは2番目に高くなっています。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
人口の見通し
セーシェルの人口構成についての予測は、今後の社会や経済への影響を考える上で非常に重要な指標です。このグラフは、1950年から2100年までのセーシェルの年齢別人口構成の推移を示しています。総人口は20世紀後半から21世紀前半にかけて着実に増加し、2030年代にピークを迎えると予想されています。その後は人口減少が始まり、2100年にはおよそ12万人に安定する見込みです。
年齢別に見ると、特に0-14歳の若年層の割合は減少傾向にあり、30歳以上の中高年層が人口の多くを占めるようになると予想されています。65歳以上の高齢層の割合も増加し、2030年以降には高齢化が一層進むことが予測されています。これにより、労働力人口が減少する一方で、医療や介護といった高齢者向けのサービス需要が高まると考えられます。
セーシェルのような小規模な国において、このような人口動態の変化は、労働力確保や社会保障の維持に大きな課題をもたらす可能性があります。
出典:UN World Population Prospects 2024
なお人口の平均成長率は1950-2020年では1.6%ほどであり、この先については2020-2050年が0.5%、2050-2100年は-0.4%の見通しです。
人口構成の見通し
このグラフは、セーシェルの年齢別人口構成の推移を割合で示しています。1950年から2100年にかけて、各年齢層が占める人口の割合がどのように変化していくかが分かります。まず、0-14歳の若年層(青い線)は、1970年代に約50%を占めていましたが、その後徐々に減少し、2100年には10%以下に落ち込むと予想されています。これは出生率の低下や高齢化の進行を反映しています。
一方、65-79歳(緑色の線)や80歳以上(濃い緑色の線)の高齢者層の割合は増加傾向にあり、特に80歳以上の割合は21世紀後半に顕著に増加すると予測されています。30-49歳(灰色の線)の労働力世代は比較的安定して推移するものの、他の年齢層の変化により相対的な割合は低下していきます。
全体として、セーシェルは今後、若年層の割合が減少し高齢者層が増加する「少子高齢化」が進行すると見込まれます。この人口動態の変化は、社会保障や医療サービスの需要増加、労働力確保の課題など、経済や社会に多くの影響を与えると考えられます。
出典:UN World Population Prospects 2024
人口ボーナス・人口オーナス
豊かな労働力は経済成長に寄与しますが、その労働力の豊富さを図る指標として人口ボーナスと人口オーナスというものがあります。
野村証券によると人口ボーナス(および人口オーナス)を以下のように定義してます。
生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すこと。人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい。逆に従属人口の比率が相対的に上昇することを人口オーナスという。
このグラフは、セーシェルの「人口ボーナス/オーナス」比率の推移を示しています。人口ボーナスとは、働き手が多く依存人口が少ない時期であり、経済成長に有利な人口構造です。一方、人口オーナスは高齢化などで依存人口が増え、経済に負担がかかる時期を指します。
このグラフを見ると、セーシェルは1970年代から2000年代初頭にかけて「人口ボーナス」の恩恵を受け、比率が2.5を超える高水準に達していました。この時期は経済的な活力が高まりやすい期間と考えられます。しかし、2030年以降、徐々に高齢化の影響が表れ、ボーナス比率が減少していくことが予測されています。2050年以降はさらに低下し、人口ボーナスの恩恵が薄まり、逆に経済的負担が増加する「人口オーナス」に近づく傾向が示されています。
このような予測は、社会保障や医療費の増加、労働力の減少といった課題を示唆しており、セーシェル政府にとって今後の経済戦略の見直しが求められるでしょう。
出典:UN World Population Prospects 2024に基づく著者の推計
男女別の学歴構成
以下は2015年の男女別の最終学歴の構成です。(データの制約により2015年のみの比較をおこなっています)
ここでは15歳未満は就学前も、在学中も卒業者もすべて合わせています。残りの5つの学歴については15歳以上を対象としています。
出典: Wittgenstein Centre for Demography and Global Human Capitalに基づく著者の推計
外務省の情報によると、セーシェルの義務教育は中学生までですが、高校進学率はほぼ100%のようです。
現在では最終学歴が未就学の人口シェアは男性が8%、女性が10%ですが、かれらは義務教育の制定以前に生まれた人々だと思われます。
専門・大学卒は男女ともに12%ほどいます。
大学については2007年に初めてセーシェル大学が設立されましたが、それ以前についてはモーリシャス等の国外の大学へ行かざるをおえなかったようです。
都市部と農村部人口の構成と人口密度
このグラフはセーシェルの都市部人口シェアと人口密度の推移を示しています。都市部人口シェアは青いラインで表され、1960年から2020年にかけて急激な増加が見られます。1960年代には30%程度だった都市部人口シェアが、現在では60%に達しており、都市化が進んでいることがわかります。
右軸の青い点は都市部の人口密度を示し、1990年には3,905人/km²とピークに達した後、やや減少しましたが、再び上昇傾向にあります。これは都市部に集中する人口が増加傾向にある一方で、適切な都市開発が追いついていない可能性を示唆しています。
一方、オレンジのラインは国全体の人口密度を示していますが、全体的に1%未満でほぼ横ばいの状態が続いています。赤い点で示される農村部の人口密度も0%に近い数値で推移しており、都市部に人口が集中している一方、農村部ではほとんど人口が増えていない状況が伺えます。
このデータから、セーシェルは都市部への人口集中が顕著であり、今後さらに都市化が進む可能性があります。これに対応するためには、都市計画やインフラの整備が重要となるでしょう。また、都市部への人口集中が続くと、住宅や交通インフラの需要が増大するため、持続可能な都市開発が求められます。
出典:World Development Indicators, 2024/09に基づく著者の推計
さいごに
セーシェルの人口動態は、今後都市化が一層進展し、都市部における人口集中が強まることが予測されます。これに伴い、都市部のインフラ整備や住宅供給の強化が重要な課題となります。また、高齢化が進む中、若年層の人口減少にも対策が求められます。持続可能な都市計画と経済政策を通じて、セーシェルの人口増加と都市の発展をバランスよく管理することが、今後の安定的な成長の鍵となるでしょう。
なお、労働については以下の記事で取り扱っていますので、是非ご覧ください。