今回は南スーダンの経済予測について取り上げます。
使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。
WEOでは最新のデータに基づき予測を毎回改訂していますので、過去のデータを顧みることで予測の不確実性を理解したうえで有益なツールとして使用することが望まれます。
南スーダンの基本情報
南スーダンはスーダン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ケニア、エチオピアを隣国にもつ北アフリカの国です。
南スーダンの人口は2016年時点で約1,200万人とアフリカで平均的な人口を有する国です。
人口密度は21人/km2とアフリカ平均の40人/km2の半分程度です。
一人あたりGDPは2016年時点で1,600ドルとアフリカ平均の5,000ドルの3割程度です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
国際比較ランキング
GDP成長率
以下のグラフは2023~2028年におけるアフリカ諸国の実質GDP成長率のランキングを示しています。
また、参考国として米国、中国および日本を並記しています。当該期間では、中国は4.1%、米国は1.9%、日本は0.8%と予測されており、日米に関してはアフリカ諸国と比較すると非常に低水準となっています。
南スーダンに関しては、同期間では4.8%ほどの経済成長を見込まれており、アフリカ諸国の中では23番目に高い水準となっています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
時系列推移
GDP成長率・一人あたりGDP
以下は2010年以降のGDP成長率(左図)および世界に占めるGDPシェア(右図)の実績値と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
南スーダンのGDP成長率はマイナスとなる年が頻出しており、また変動も大きくなっています。
そのため予測をすることが難しく、過去のWEOにおいても5%程度で見込まれることが多いですが、それは実績値に比べると楽観的な見込みだったと言えます。
世界に占めるGDPシェアは非常に小さく実績値は2011年では0.04%ほどでしたが、2017年以降は0.01%で固定されています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
次に以下のグラフは一人あたりの実質GDPの推移を表しています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
単位は国際比較で用いられる2017年PPP換算(米ドル)を用いています。PPPについては以下の記事でまとめていますので、こちらも参照ください。
今回はアフリカ各国の物価の違いについて整理します。 国際間の物価の違いを表す経済データとして、購買力平価(PPP)というものがあります。今回はこのPPPを用います。 購買力平価(PPP)とは 総務省によると ※ 購買力平価(Pu[…]
一人あたりGDPについては、2011年では1,100ドルほどでありましたが、2020年には400ドルまで低下しており、最新のWEOの2028年においても400ドルからあまり改善しておりません。
インフレ率
以下は2010年以降の年次インフレ率(左図)および2011年を基準としたインフレ指数(右図)の実績値と過去の数時点および最新のWEOの予測を表しています。
南スーダンではインフレ率は2016年に350%とハイパーインフレとなるなど、不安定な物価状況となっています。
なお、直近のWEOの予測では2028年には8%ほどに収まると見込まれています。
また、インフレ指数は2012年を100とすると、実績値では2022年は14,000ほどと著しく物価が上昇しており、さらに2028年の見込みでは24,000程度まで上昇すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
政府の歳入歳出・負債
以下は2010年以降の政府の歳入(左図)と歳出(右図)の実績値と過去の数時点および最新のWEOの予測を表しています。
2011年ではGDP比で歳入は25%、歳出も20%と黒字財政でしたが、2022年では歳入はGDP比で30%、歳出は25%とともにGDP比が上昇しています。
また、直近のWEOの予測では2028年ではそれぞれ30%と29%と見込まれており、ほぼ均衡財政へ転じると予測されています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
さらに以下は政府の総負債(左図)と純負債(右図)の推移を表しています。
なお、純負債は総負債から債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものをさします。
出所:World Economic Outlook Database, October 2023
南スーダンのGDPに対する総負債比と純負債は2012年ではともに10ほどでしたが、2016年にはともに120ほどまで悪化するものの、その後は減少し転じ、2022年にはともに40ほどまで悪化しています。
また、直近のWEOでは2028年にはともに35ほどまで改善すると見込まれています。
さいごに
今回使用しているWEOは常時データを改訂しています。
特に近年では新型コロナの状況により予測値が大幅に改訂することありますので、新型コロナについて状況を知りたい場合は以下の記事を参照ください。
今回は南スーダンの新型コロナの感染状況について簡単に整理します。 南スーダンの基本情報 南スーダンはスーダン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ケニア、エチオピアを隣国にもつ北アフリカの国です。 […]