今回はジンバブエの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
ジンバブエの基本情報
ジンバブエはナミビア、ボツワナ、南アフリカ、モザンビーク、ザンビアを隣国に持つ南アフリカの内陸国です。
ジンバブエの人口は2016年時点で約1,600万人で、アフリカでは中位の国です。また人口密度もアフリカ平均の40人/km2に対してほぼ同じ41人/km2です。
一人あたりGDPは2016年時点で1,800ドルとアフリカ平均の5,000ドルの4割程度です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
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GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、ジンバブエは長期では46番目の2.0%と低い水準であり、さらに2000年以降に限定すれば50番目の0.2%と最下位となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、ジンバブエは47%と米国とほぼ同じ水準であり、アフリカでは6番目に高い水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると、1970年以降ほぼ横ばいに推移しています。
一方、就業者数自体は人口増加に伴ない就業者数は200万人から700万人へ大幅に増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
労働の構成について気になる方は以下の記事もご覧ください。
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資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はジンバブエのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1970年代には20%ほどと比較的高い水準でしたが、その後は2000年代の大幅な変動を除きほぼ10%台で推移しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
名目資本ストックシェアは2000年以前では長期で2.0以下で推移していますが、実質資本ストックは1960年には8.o以上と乖離しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、ジンバブエは1.7とアフリカでは46番目であり、資本ストックは低い水準とあると考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
ジンバブエでは、1960年代後半、2000年代後半にTFPが大きく経済成長に寄与している期間では経済成長も順調に伸びていましたが、1970年代や1990年代にはTFPがマイナスに寄与したことでGDP成長率が鈍化しています。
なお、ジンバブエは労働投入は安定してプラスで推移している一方で、資本投入はプラスとマイナスを行き来しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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