今回はカメルーンの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
カメルーンの基本情報
カメルーンはナイジェリア、チャド、中央アフリカ共和国、コンゴ、赤道ギニア、ガボンに接する中央アフリカの国です。
カメルーンの人口は2016年時点で約2,400万人で、アフリカではやや人口の多い国です。
一方、一人あたりGDPは2016年時点で3,200ドルとアフリカ平均の5,000ドルの6割程度とアフリカではやや低位の国です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
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また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
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GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、カメルーンは長期では13番目に高い4.4%となっており、2000年以降では成長率は4.3%とほぼ変わっていませんが、アフリカ全体では29番目へランクを落としています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、カメルーンは40%であり、アフリカでは14番目とやや高い水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると、1960年以降就業率はやや減少して推移していますが、人口増加に伴ない就業者数は200万人から1,000万人へ増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
労働の構成について気になる方は以下の記事もご覧ください。
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資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はカメルーンのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1970年代はおよそ20%超と高いシェアを占めていましたが、1990年前後には10%まで減少し、2000年以降は20%弱まで再度拡大しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
カメルーンでは、実質・名目資本ストックは1980年以降投資シェアが減少し始めたことで、資本ストックも減少していますが、その後は再度資本蓄積が進んでおり、直近ではGDP比率で3倍近くまで拡大しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、カメルーンは2.6とアフリカでは28番目であり、資本ストックは平均的な水準とあると考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。
今回はカメルーンの国富(National wealth)についてです。 なお、国富(National wealth)とはストックを表し、これに対応するフローがGDPと見ることができます。 ここでは、World[…]
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
カメルーンでは、1970年代には労働、資本、TFPが経済成長に同程度寄与していましたが、1980年代~2000年代ではTFPはマイナスに寄与しています。特に1980年代のTFPのマイナス寄与度は資本労働の合計と同程度であったため、経済成長はほぼ0%となっています。
2010年代に入るとTFPは再びプラスへ転じ、その結果経済成長は4.5%まで回復しています。
なお、全期間において資本と労働は安定してプラスに寄与しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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