今回はケニアの経済成長を成長会計の観点からフォーカスしたいと思います。
成長会計とは、経済成長の内訳の要因を明らかにしようとするものであり、基本的に労働投入、資本投入、これら2つ以外で成り立つ全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)の3つ分解されます。
また、TFPとは労働生産や資本投入で説明できない要因であることから、技術進歩や生産の効率化などの要因に相当すると解釈されます。
そこで、この記事では経済成長を表すGDP成長率、そして労働、資本、全要素生産性について触れています。
ケニアの基本情報
ケニアはソマリア、エチオピア、ウガンダ、タンザニアを隣国にもつ東アフリカの国です。
ケニアの人口は2016年時点で約4,700万人とアフリカでは7番目に人口が多い国です。
人口密度は81人/km2とアフリカ平均の40人/km2の2倍ほどです。
一人あたりGDPは2016年時点で3,200ドルとアフリカ平均の5,000ドルの6割程度です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
GDP成長率
以下のグラフはアフリカ諸国におけるGDPの平均成長率(左図:1970-2019, 右図:2000-2019)のランキングを示しています。
日本や米国は1970年以降の長期においては、おおよそ3%弱の経済成長を遂げていますが、2000年以降に限定すれば日本の成長率はほぼ0%に近くなっています。
一方、ケニアは長期では6番目に高い4.9%となっていますが、2000年以降では成長率は6.3%と加速しています。ただし、アフリカ全体においては13番目と順位を下げています。
出所:Penn World Table, version 10.0
就業率・就業者数
労働投入の主な要因となるのが、就業者数です。
以下のグラフはアフリカ諸国における人口あたりの就業率のランキングです。
日本は就業率が55%とアフリカのいずれに国に比べても高い水準となっています。
一方、ケニアは48%と米国とほぼ同水準となっています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また就業率の推移をみると1960年以降おおよそ40-50%の間で横ばいに推移していますが、就業者数自体は人口増加にともない1960年の400万人から直近では2,500万人超へ増加しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
資本投入
経済成長に必要な資本投入は、投資から資本ストック化され、それを経由して資本投入につながるため、投資が起点となります。
以下はケニアのGDPに占める最終消費項目のシェアの推移を表していますが、投資シェアは1960年代は10%ほどでしたが、1970年代には20%近くまで上昇しています。
1980年代と1990年代では10%へ水準を戻していますが、1990年代後半から上昇し、2010年代では20%近くまで再び上昇しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
投資により蓄積される資本ストックの推移を表したものが以下となります。
名目資本ストック比率および実質ストック比率は1960年ではおおよそ3.0程度であり、直近までほぼ横ばいで推移しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
また以下はアフリカ諸国における名目資本ストック比率のランキングを表します。
日本は5.2とアフリカでも比較的高位にありますが、米国は3.4とアフリカ諸国と比べて平均的な水準と言えます。
一方、ケニアは2.4とアフリカでは32番目であり、資本ストックはやや低い水準と考えられます。
出所:Penn World Table, version 10.0
なお、資本ストックは建築物、機械、ITなどの生産資産に限られていますが、より広い概念にあたる国富については以下の記事を参照ください。
今回はケニアの国富(National wealth)についてです。 なお、国富(National wealth)とはストックを表し、これに対応するフローがGDPと見ることができます。 ここでは、World B[…]
全要素生産性(TFP)
以下のGDP成長率に占める要因の内訳を表します。(左図:毎年、右図:毎10年)
ケニアでは1960年以降長期にかけて労働投入はGDP成長率の2-3ポイントほどを占めており、経済成長の主要因となっています。
また、投資が加速する1970年代や2000年代以降では資本投入の寄与度も2ポイントほどまで拡大しすることで、GDP成長率は安定して5%程度を実現しています。
TFPについては基本的には0.5ポイントほどあまり高い成長率とはなっておらず、また1990年代に関しては
から1990年にかけて独立戦争下でしたが、比較的その期間においても経済成長はプラスととなることが多く、それは1960年代および1970年代では資本投入が大きく寄与し、1980年代では労働投入が大きく寄与しています。
しかし、TFPを見ると戦時下の影響かマイナスに寄与していましたが、その後の1990年代では1991年に複数政党制を導入したことにより、政情が不安定化し、その結果TFPは大幅に低下しており、経済成長にマイナスに寄与しています。
出所:Penn World Table, version 10.0
さいごに
今回は成長会計の観点から経済成長を資本や労働に分解して見てきました。
経済について各産業の構成を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はケニアの産業構造を確認します。 ケニアの基本情報 ケニアはソマリア、エチオピア、ウガンダ、タンザニアを隣国にもつ東アフリカの国です。 ケニアの人口は2016年時点で約4,700[…]