今回はアルジェリアの経済予測について取り上げます。
使用しているデータは国際通貨機関(IMF)が年に2~4回刊行しているWorld Economic Outlook(WEO)を用いています。
WEOでは最新のデータに基づき予測を毎回改訂していますので、過去のデータを顧みることで予測の不確実性を理解したうえで有益なツールとして使用することが望まれます。
アルジェリアの基本情報
アルジェリアの人口は2016年時点で約4,000万人とアフリカでは9番目に人口が多い国です。
人口密度は17人/km2とアフリカ平均の40人/km2の半分以下です。
一方、一人あたりGDPは2016年時点で15,000ドルとアフリカ平均の5,000ドルと3倍ほどあり、アフリカでは6番目に高い国です。
アフリカ諸国の基本的な経済指標については以前まとめていますので、そちらを参照してください。
ここではアフリカの経済指標についてざっくり整理します。 アフリカと一言でいっても、アフリカ連合に加盟している国だけでも55か国もあります。なお、外務省のHPを確認すると2021/2/5時点で54か国となっていますが[…]
また、アフリカ諸国間のGDP成長率の相関については、以下をご覧ください。
今回は2000年以降のアフリカ諸国におけるGDP成長率の相関係数を確認してみます。 まずは、アフリカ諸国のGDPの規模について見てみます。 GDPランキング 以下は2016年のアフリカ諸国におけるGDPランキン[…]
国際比較ランキング
GDP成長率
以下のグラフは2021~2027年におけるアフリカ諸国の実質GDP成長率のランキングを示しています。
また、参考国として米国と日本を並記しています。当該期間では、米国は2.2%、日本は1.2%と予測されており、アフリカ諸国と比較すると非常に低水準となっています。
アルジェリアに関しては、同期間では2.6%ほどの経済成長を見込まれており、アフリカ諸国の中では50番目に高い水準となっています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
時系列推移
GDP成長率・一人あたりGDP
以下は2000年以降のGDP成長率(左図)および世界に占めるGDPシェア(右図)の実績値と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
アルジェリアのGDP成長率は2020年の新型コロナの時期を除き比較的安定しており、おおよそ2-6%の間で推移しています。
過去のWEOの予測を見るとWEO2015以前はおおよそ、4-5%程度の経済成長が見込まれていますが、実績値はその予測を下回って推移してきたこともあり、WEO2019以降はおおよそ1-2%程度と見込まれています。
最新のWEOの予測においても2023-2027年ではおおよそ2%程度の成長が見込まれています。
世界に占めるGDPシェアの実績値は2000年の0.52%から2021年には0.37%ほどまで緩やかに低下しており、WEOの最新の予測では2027年にはさらに0.35%ほどまで低下すると見られています。
なお、WEOの水準が改訂しているのは、GDP統計は随時データの推計方法の変更や会計概念が拡張するため、政府が公表する実績値がその都度改訂してきたことに起因していると考えられます。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
次に以下のグラフは一人あたりの実質GDPの推移を表しています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
単位は国際比較で用いられる2017年PPP換算(米ドル)を用いています。PPPについては以下の記事でまとめていますので、こちらも参照ください。
今回はアフリカ各国の物価の違いについて整理します。 国際間の物価の違いを表す経済データとして、購買力平価(PPP)というものがあります。今回はこのPPPを用います。 購買力平価(PPP)とは 総務省によると ※ 購買力平価(Pu[…]
一人あたりGDPについては、2000年では9,000ドルほどでしたが、2021年では11,000ドルとなり、2027年には12,000ドルほどまで上昇すると見込まれています。
インフレ率
以下は2000年以降の年次インフレ率(左図)および2000年を基準としたインフレ指数(右図)の実績値と過去の数時点および最新のWEOの予測を表しています。
アルジェリアでは年々インフレ率が上昇傾向にあり、2000年代ではおおよそ2-4%程度に収まっていましたが、2010年代以降は2-8%程度とインフレ率が高まる年次が見られます。
また、過去のWEOの予測では、WEO2015以前では4%程度のインフレ率を予測していることが多かったですが、WEO2019以降は上振れに予測されることが多くなっています。
最新のWEOでは2022年は10.0%程度と見込まれており、2027年かけてそのインフレ率は継続すると見込まれています。
また、インフレ指数は2000年を100とすると、実績値では2021年は240ほどとなり、さらに2027年の見込みでは410強程度まで上昇すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の物価変動について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はアルジェリアのCPIおよびデフレータについて整理します。 なお、ここでは国内での物価の成長率について取り上げます。 物価水準の国際比較については、以下の記事などを参照ください。 [sitecard subtitle=[…]
失業率
以下は2000年以降の失業率の実績値(Actual)と過去の数時点および直近(Latest)のWEOの予測を表しています。
アルジェリアの失業率は2000年では30%ほどありましたが、2019年には11%程度まで改善しています。
しかし、過去のWEOは一貫して失業率は上昇するように見込まれており、特にWEO2021では2026年には19%ほどまで上昇すると見込まれています。
ただし、最新のWEO2022では予測が不透明となっております。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
なお、過去の失業率や労働について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
今回はアルジェリアの労働関連のデータについて簡単に整理します。 アルジェリアの基本情報 アルジェリアの人口は2016年時点で約4,000万人とアフリカでは9番目に人口が多い国です。 […]
政府の歳入歳出・負債
以下は2000年以降の政府の歳入(左図)と歳出(右図)の実績値と過去の数時点および最新のWEOの予測を表しています。
2000年ではGDP比で歳入は38%、歳出は29%ほどと大幅な黒字収支となっていましたが、その後は2008年をピークに歳入比率は減少傾向にあり2021年には30%ほどまで低下している一方で、歳出比率は増加傾向にあり、2021年には前期から減少しているものの37%と赤字収支へ転じています。
なお、最新のWEOの予測では2027年では歳入および歳出はそれぞれ30%と40%と見込まれており赤字収支は継続すると見込まれています。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
さらに以下は政府の総負債(左図)と純負債(右図)の推移を表しています。
なお、純負債は総負債から債務証券に対応する金融資産(金・SDR、通貨・預金、負債証券、貸付金、保険・年金・標準保証制度、その他売掛金など)を除いたものをさします。
出所:World Economic Outlook Database, October 2022
アルジェリアのGDPに対する総負債比と純負債比は2001年ではそれぞれ59と60ほどでしたが、2008年にはそれぞれ10と-40程度まで急激に改善しています。
しかし、その後は上昇へ転じ2021年にはそれぞれ63と52まで上昇しており、さらに最新のWEOでは2027年にはそれぞれ85と80まで悪化すると見込まれています。
さいごに
今回使用しているWEOは常時データを改訂しています。
特に近年では新型コロナの状況により予測値が大幅に改訂することありますので、新型コロナについて状況を知りたい場合は以下の記事を参照ください。
今回はアルジェリアの新型コロナの感染状況について簡単に整理します。 アルジェリアの基本情報 アルジェリアの人口は2016年時点で約4,000万人とアフリカでは9番目に人口が多い国です。 人口密度は17人[…]